相続【手続き編】

第1章 不動産の名義変更

1.不動産の名義変更が問題となる場面

  • 土地や建物の等の不動産をお持ちの方が亡くなられた
  • 相続人の間で遺産について話がまとまりそう、あるいは完全にもめているわけではない

2.必要書類の収集

【必要書類と取得先】

必要書類取得先備考
戸籍本籍地の市区町村役場
被相続人の戸籍の附票本籍地の市区町村役場登記上の住所が記載されたものを取得する。
固定資産税評価証明書不動産所在地の市区町村役場の税務課など東京23区の場合は都税事務所で取得する。
印鑑証明書住所地の市区町村役場遺産分割協議をする場合に、各相続人の物を取得する。
住民票住所地の市区町村役場登記名義人になる相続人のもので、マイナンバーの記載のないものを取得する。

書類集めについて詳しくはこちらへ

◇法定相続情報証明制度

戸籍等を何度も収集することになるのを防ぐべく、法定相続情報制度ができました。

一度作れば便利ですが、一度作るまでの戸籍の収集は、今までとほとんど同じです。

法定相続情報について詳しくはこちらへ

3.農地や山林を相続した場合の注意点

 平成23年4月の森林法改正により、平成24年4月以降、森林の土地の所有権を取得した者は、市町村の長に対して届出をすることが必要になりました。

山林を相続するときについて詳しくはこちらへ

不要な山林を相続しないことはできるのか

 相続はお亡くなりになられた方の財産を全て受け継ぐ制度ですから、一部の土地だけを手放す(一部放棄)ことはできません。

似た概念として相続の放棄というものがありますが、こちらはお亡くなりになられた方の財産を一つも受け継がない制度です。

 この事態に対応すべく、不要な土地を手放せる制度として2023年4月から相続国庫帰属制度が始まります。

 相続国庫帰属制度について詳しくはこちらへ

(2)農地を相続するとき

 農地法は「現況主義」を採用しているため、たとえ登記地目が農地以外になっていたとしても現況が「農地」であれば、農地として「届出対象」となります。

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第3章 亡くなったあと14日以内に行うこと

1.死亡届

 死亡届と一緒に、「埋火葬許可症交付申請書」も役場に提出しなければなりませんが、これも葬儀社が代行してくれます。提出すると「火葬許可証」が、火葬がすむと、「埋葬許可証」が交付されます。これを墓地に提出すれば、お墓に納骨できます。

 なお、成年後見制度の後見人なども死亡届を提出できるようになりました。

2.葬儀費用の用意

 相続税が気になる方は、相続税申告に向けて請求書や領収書を保管しておき、領収書がないものはメモを取っておくとよいでしょう。相続財産から控除できるため少しでも税金を抑えることができるからです。

(1)葬儀費用

 葬儀費用の平均額は150~200万円です。

 しかし、このお金を故人の銀行口座から、簡単には引き出せません。亡くなったことを銀行に伝えると、故人の口座は凍結され、配偶者や実子でもお金をおろすことはできなくなります。遺言で指定がない場合の出金は、相続人全員の合意と故人の出生から死亡までのつながりのわかる戸籍謄本などが必要になるのが原則です。

 ただし、これを貫くと葬式代に困るケースがありますので新しい制度ができました。

(2)遺産分割前の預貯金の払い戻し制度(令和元年7月1日~)

 これは、葬儀費用や火葬費用、医療費、当面の生活費などの支払のために相続人にお金が必要になった際、遺産分割前であっても、単独で一部の預貯金の払い戻しを受けられるという制度です。

「相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分」を払い戻すことができます。

遺産分割前の預貯金の払い戻し制度について詳しくはこちらへ

3.世帯主の変更手続き

 世帯主が亡くなったら14日以内世帯主変更届(住民異動届)を提出して、世帯主を変更する必要があります。

世帯主変更届の提出方法

期限14日以内
提出先故人が住んでいた市区町村役場の窓口
提出ができる人新世帯主、世帯員、代理人
提出する書類世帯主変更届(住民移動届であることが多い)
その他必要なもの本人確認書類
印鑑(認印)

4.健康保険証の返却

 国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、故人が住んでいた市区町村役場の窓口で手続きをします。期限は14日以内。介護保険を受けていた場合は、介護保険の被保険者証の返却と資格喪失手続きも、同時に行いましょう。 

後期高齢者医療制度に加入していた人(故人が75歳以上か、65~74歳で障害があった人)

返却先故人が住んでいた市区町村役場の窓口
提出する喪失届後期高齢者医療喪失届(自治体によっては死亡届で完了)
返却するもの後期高齢者医療被保険者証、高額療養費の限度額適用認定証など
その他必要なもの死亡を証する戸籍謄本、申請者の印鑑、本人確認書類
※埋葬費の申請の際、必要となります
※高額療養費の還付及び保険料の返還がある場合には、相続人の印鑑、預金通帳も必要となります

国民健康保険に加入している人(定年退職した75歳以下の人、自営業者など)

返却先故人が住んでいた市区町村役場の窓口
提出する喪失届国民健康保険資格喪失届(自治体によっては死亡届で完了)
返却するもの国民健康保険被保険者証(世帯主が死亡した場合は世帯主全員分)
国民健康保険高齢受給者証(70~74歳の人のみ)
その他必要なもの死亡を証する戸籍謄本、申請者の印鑑、本人確認書類

5.葬儀・埋葬の補助

葬祭費(故人が、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合)

支給額1~7万円
申請先故人が住んでいた市区町村役場の窓口
申請できる人葬祭費用を支払った人。喪主など。
必要な書類故人の健康保険証、葬儀にかかった費用がわかる領収証、申請者の印鑑、申請者の本人確認書類、申請者の預金通帳など
期限原則、葬儀日の翌日から2年以内

埋葬料・埋葬費(故人が会社の健康保険に加入していた場合。定年退職などで脱退後、3か月以内に亡くなった人を含む)

埋葬料埋葬費
支給額一律上限5万円葬祭にかかった額。
上限は5万円
申請できる人故人によって生計を維持されていて、埋葬を行った人左の該当者がおらず、埋葬を行った人
申請先故人の勤務先管轄の協会けんぽか、故人の勤務先の健康保険組合同左
必要な書類・残された家族に健康保険の被扶養者がいる場合、事業主の証明または死亡診断書の写し、埋葬火葬許可証の写し、住民票の除票、亡くなった人が記載されている戸籍謄本等のいずれか
・健康保険の被扶養者がいない場合、住民票、住居が別の場合は仕送りが確認できる書類
・残された家族に健康保険の被扶養者がいる場合、事業主の証明または死亡診断書の写し、埋葬火葬許可証の写し、住民票の除票、亡くなった人が記載されている戸籍謄本等のいずれか
・健康保険の被扶養者がいない場合、住民票、住居が別の場合は仕送りが確認できる書類
・埋葬に要した領収書、明細書
期限死亡した日の翌日から2年埋葬の翌日から2年

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第4章 3~10ヶ月に行う事

1.相続の放棄・限定承認の検討(3か月以内)

 相続放棄は、マイナスの財産もプラスの財産も引き継ぎませんという選択です。主に、遺産に借金が多い場合の活用します。相続放棄や限定承認の手続きを何もとらない場合は、いわばプラスの財産もマイナスの財産もすべて相続することになります。これを単純承認といいます。

相続放棄について詳しくはこちらへ

2.公共料金の解約

 電気・ガス・水道や携帯電話、ネットを解約。

銀行口座が凍結されれば、引き落としができなくなります。故人の家族が住んでいたり、遺族が片づけに来たりしたときに、電気やガスが止まってしまったということも起こりかねません。

 故人が、どんなサービスを使っていたか分からない場合は、通帳の引き落とし欄、クレジットカードの明細書、請求書、郵便物などを根気強くチェックしましょう。

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3.パスポートや免許証の返却

 パスポートや免許証は失効していなければ返却しなければなりません。

 パスポートの返却先は、国内なら都道府県のパスポートセンター、国外在住の場合は最寄りの日本大使館、もしくは総領事館になります。

 一方、運転免許証の場合は、故人の運転免許証と死亡日を確認できる書類のコピーを最寄りの警察署に提出します。印鑑カードは、故人が住んでいた市区町村の役場に返却します。

4.高額療養費の請求

 歴月(1日から月末まで)に被保険者が支払う医療費の上限が定められており、その額をこえたぶんが戻ります。

 故人が医療費を払いすぎていれば、限度額適用認定証を事前に医療機関に提出している場合を除き、遺族は「高額療養費」を請求できます。

 通常は、高額療養費の対象者には、市町村や健康保険組合などから手続きのお知らせや申請書などが送られてきますが、健康保険組合によって違いがあります。

5.高額介護合算療養費の請求

 医療保険と介護保険のどちらも利用する世帯において、1年間の医療費と介護サービス費の両方の自己負担額が著しく高額になった場合に負担を軽減できるのが「高額介護合算療養費」制度です。

 たとえば在宅で介護サービスを受けながら病院にも通院していたといった世帯が対象になります。

高額介護合算療養費支給申請書の提出方法

提出する人亡くなった人の法定相続人
提出先亡くなった人の自宅の住所地の市区町村役場
期限亡くなった翌日から2年間
必要な書類・届出人と亡くなった人の関係が記載されている戸籍謄本
・届出人の振込先の口座が確認できるもの(通帳など)
・自己負担額証明書(マイナンバーを利用しない場合)
・届出人の印鑑
・届出人の本人確認書類
・後期高齢者医療被保険者証(後期高齢者の場合)

6.準確定申告

  被相続人に、事業所得、不動産取得などの所得が20万円以上あった場合に必要となります。被相続人の所得にかかる「所得税」についての手続きです。

 故人の所得税は4か月以内に申告が必要、代表1人ではなく、相続人全員で行います。

準確定申告をする方法

提出先故人の住所地などを管轄する税務署
申告をする人相続人全員
提出書類準確定申告書(第1,2表)
確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)
年金や給与などの源泉徴収票、青色決算書または収支内訳書(個人事業による収入や不動産収入があった場合)など

申告の必要がないケース

 収入が400万円以下の公的年金しかないか、ほかに所得があったとしても20万円以下の場合、申告する必要はありません

7.個人事業の廃業・承継

 故人が個人事業を営んでいた場合は引き継ぐ場合でもいったん廃業します。引き継ぐ場合には、相続する人が改めて開業手続きをします。

故人が営んでいた個人事業を廃業するには

提出先故人が納税していた税務署
届出ができる人相続人
提出する書類個人事業の開業・廃業等届出書、個人事業者の死亡届書
期日1か月以内
(個人事業者の死亡届出書は「すみやかに」提出)

故人が営んでいた個人事業を引き継ぐには

提出先引き継ぐ人が納税している税務所
届出ができる人引き継ぐ人
提出する書類個人事業の開業・廃業等届出書、消費税課税事業者届出書(売上高1000万円超の場合)、相続があったことにより課税事業者となる場合の付表(消費税を納める義務が生じた場合)
期日個人事業の開業・廃業等届出書は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は次の通り
①被相続人が亡くなった日がその年の1月1日から8月31日
 ⇒死亡の日から4か月以内
①被相続人が亡くなった日がその年の9月1日から10月31日
 ⇒その年の12月31日
①被相続人が亡くなった日がその年の11月1日から12月31日
 ⇒翌年の2月15日

8.名字を検討

 配偶者が亡くなり、旧姓に戻したい場合は、本籍地か住民票を登録している役所に「復氏届」を提出します。

 義理の親との親族関係を終了させたい場合は「姻族関係終了届」を本籍地か住民票がある自治体の役所か役場に提出しますが、誰の同意も必要ではありません。

9.相続税の申告・納付(10か月以内)

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第5章 期限がないけど早めに行いたい手続き

名義変更・各種手続き

  • 不動産名義変更
  • 預貯金の名義変更
  • 自動車所有権の変更・・・陸運局に移転登録をする。車庫証明は、保管場所に変更なければ手続きは不要
  • 年金 ①年金受給の停止②未支給年金の請求③遺族年金や死亡一時金の請求

1.銀行の預貯金口座の相続手続きの流れや注意点

(1)銀行での手続き

預貯金口座の相続手続きの流れ

  1. 各金融機関へ相続が発生した旨の電話連絡口座凍結依頼
     特に、口座凍結となるため、故人が口座を持っていた金融機関への連絡はすみやかに行いましょう。
  2. 相続手続き書類の受領及び残高証明書等の取得
     故人の財産を把握するためにも、金融機関の窓口で故人が亡くなった日付の「残高証明書」を取得しておきましょう。遺産分割協議のときに参考にしたり、相続税の申告などで使用したりすることができます。相続人全員で請求する必要はなく、遺産分割協議前でも取得できます。
  3. 相続人調査(戸籍謄本等の収集)
  4. 相続手続き書類の提出(承認方法の指定)
  5. 承継手続き完了

口座凍結

 預貯金に関して、金融機関が預金者が死亡したという情報を得ると、取引の安全のために入出金ができなくなります。これを一般的には「口座凍結」と言います。

故人の銀行の預金は下せないのですか?

全額を下すには遺産分割協議書などが必要になりますが、2018年の改正により、一定額までは払い戻しを受けられるようになりました(遺産分割前の預貯金の払い戻し制度)。

相続手続き書類の受領及び残高証明書等の取得

残高証明書を取得するには

申請できる場所被相続人の口座がある金融機関の窓口
申請できる人相続人、遺言執行者、相続財産管理人などの相続権利者
必要な書類・残高証明依頼書
・被相続人が亡くなったことを確認できる戸籍謄本など
・手続きをする人が相続人、遺言執行者、相続財産管理人などであることがわかる戸籍謄本や審判書など
・手続きをする人の実印、印鑑証明書(発効後6か月以内)

口座に入った現金を相続、払い戻しするには

申請できる場所被相続人の口座がある金融機関の窓口
申請できる人相続人、遺言執行者、相続財産管理人などの相続権利者
必要な書類共通
・口座がある金融機関所定の「相続関係届出書」
・被相続人の預金通帳、証書、キャッシュカードなど
・被相続人や相続人の戸籍謄本など※1
遺産分割協議書、遺言書がない場合
・法定相続人全員の印鑑証明書(発効日から6か月以内)
遺産分割協議書がある場合
・遺産分割協議書
・法定相続人全員の印鑑証明書(発効日から6か月以内)
・手続きをする人の実印
遺言書があり、受遺者が手続きする場合
・遺言書
・相続する人の印鑑証明書(発効日から6か月以内)※2
※1 「法定相続情報一覧図の写し」を提出する場合は、原則不要
※2 遺言書の内容によっては法定相続人全員分が必要
金融機関等に提出する戸籍はコピーで良いですか?

金融機関にもよりますが、原本を持参すれば通常はコピーの提出で大丈夫です。

原本を渡しても職員がコピーをして原本は返してもらえるのが通常ですが、金融機関の職員が慣れていない場合などは原本が返ってこない時もあるので、そのときは返してもらえるよう声をかけることをお勧めいたします。

銀行口座がいっぱいあるのですが、一気にできませんか?

戸籍や住民票原本を逐一提出せずにすむ「法定相続一覧図」を依頼されるとよいと思われます。

 銀行の手続きがいくつもある場合、一覧図を何枚でも発行できます。返却書類を待つことなく、金融機関での手続きが同時に進められます。

 ただし、あくまで戸籍謄本等の情報のみから作成されるため、相続放棄に関する事項などは記載されません。

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(2)ゆうちょ銀行での手続き

ゆうちょ銀行は手順が異なるので注意です。手続き開始から払戻まで約1ヶ月かかります。

ゆうちょ銀行の相続手続きの流れ

  1. 「相続確認表」を提出する
     「相続確認表」に、遺言書の有無や相続人の相関図など必要事項を記入。ゆうちょ銀行が郵便局の貯金窓口に提出する。「相続確認表」は窓口のほか、日本郵便のホームページでダウンロードできます。
  2. 「必要書類のご案内」を受け取る
     1の申込みをしてから1~2週間程度で「必要書類のご案内」が届きます。案内に沿って相続手続きに必要な書類を準備します。たとえば、すべての相続人が確認できる戸籍謄本や、相続人の印鑑証明書など。遺言書や遺産分割協議書がある場合はあわせて提出します。
  3. 必要書類を提出する
     準備した必要書類を、ゆうちょ銀行か郵便局の貯金窓口に提出します。
  4. 相続払戻金を受け取る
     必要書類を提出すると、1~2週間程度で払い戻しのための書類が送られてきます。

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2.年金関係の手続きをすませる

税金や医療費などの清算が必要だと知りました。不足分を支払えば良いのでしょうか?

不足分を支払うだけでなく、払いすぎたお金が戻ってくることもあります。故人の見送り後に行う手続きのうち、公的な入出金に関する清算や請求を行うことで、過払い金(保険料や税金、医療費・介護費など)のお金が戻ることがあります。

1.受給停止

 まず、故人が年金を受給していたり、年金を受給している家族の加算の対象者であったりした場合、年金の受給を止めてもらう必要があります。

 一方、故人がまだ受け取っていなかった年金や、亡くなった日よりもあとに振り込まれた年金のうち、亡くなった月分までの年金は、「未支給年金」として、故人と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。

年金受給をストップするには

申請先最寄りの年金事務所、または街の年金相談センター
申請できる人①生計を同じくしていた親族。いない場合は、その他の親戚や同居人、家主でも可能
②年金受給者
申請書類①年金受給権者死亡届(年金受給者が亡くなった場合)
②加算額・加給年金額対象者不該当届(年金受給者の加算対象者が亡くなったとき)
その他
必要な書類
①故人の年金証書、死亡の事実を明らかにできる書類
(戸籍抄本、死亡診断書のコピー、住民票など)
②なし

未支給年金を請求するには

申請先最寄りの年金事務所、または街の年金相談センター
申請できる人故人と生計を同じくしていた①配偶者②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟⑦3親等内の親族。
上の順位の人が優先して受給する。
同じ順位の人が2人畳いる場合、1人にまとめて受給する。
申請書類未支給年金・未支払給付金請求書
その他
必要な書類
故人の年金証書
故人と請求者の身分関係を明らかにできる書類
(市区町村長の証明書か、請求者の戸籍抄本・謄本)
故人の住民票(除票)と請求者の世帯全員の住民票
受け取りを希望する金融機関の通帳(コピー可)
生計同一関係に関する申立書(故人と別世帯に住む人が請求する場合)など

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2.遺族年金の申請

一家の大黒柱が亡くなったとき遺族は「遺族年金」を受給できます。受給できるのは、原則的に、故人に生計を維持されていた家族です。

 故人が国民年金に加入していた場合は「遺族基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の双方が得られます。

 もし、遺族年金の受給条件を満たしていなくても、国民年金の場合は「寡婦年金」か「死亡一時金」を受給できることがあります。

遺族が受給できる年金や一時金の種類

故人の状況遺族が受給できる可能性のある年金・一時金
国民年金に加入していた
(主に自営業)
遺族基礎年金
寡婦年金
死亡一時金
厚生年金に加入していた
(主に会社員)
遺族基礎年金+遺族厚生年金
中高齢寡婦加算
老齢基礎年金の受給権者
(受給資格期間が25年以上あること。原則65歳以上だが、60~64歳も含む)
遺族基礎年金
老齢厚生年金の受給権者
(受給資格期間が25年以上あること。原則65歳以上だが、60~64歳も含む)
遺族基礎年金+遺族厚生年金
中高齢寡婦加算

(1)遺族基礎年金

 故人が国民年金加入者なら「遺族基礎年金」。遺族は、年間78万円+αを受給できます。

 遺族基礎年金を受け取ることができるのは、子どものいる故人の配偶者か、故人の子どものいずれかです。

遺族基礎年金を受給できる人は

故人の条件・国民年金に加入している間に亡くなった人
・過去に国民年金に加入していたことがあり、亡くなった際に日本国内に住所があり、かつ60歳以上65歳未満であった人
・老齢基礎年金の受給権者
(65歳以上で、受給資格期間が25年以上あること)
・老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている人
(65歳未満だが、受給資格期間が25年以上あること)
受給できる人死亡した人によって生計を維持されていた①配偶者②子
※子とは以下のものに限る
18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
金額・781,700円+子の加算

申請するには(遺族基礎年金・遺族厚生年金に共通)

申請先遺族基礎年金のみに該当する場合は市区町村役場
上記以外の申請は、最寄りの年金事務所か街の年金相談センター
申請書類年金請求書
その他
必要な書類
①故人と請求者の年金手帳、戸籍謄本
(記載事項証明書。亡くなってから6か月以内に交付されたもの)
②世帯全員の住民票の写し
(死亡者の住民票の除票も。できるだけ住民票コードの記載があるもの)
③請求者の収入が確認できる資料(所得証明書、源泉徴収票など)
④受取先金融機関の通帳かキャッシュカード(コピー可)
⑤印鑑(認印可)
⑥死亡診断書のコピーなど

(2)遺族厚生年金

 故人が厚生年金加入者なら「遺族厚生年金」。年金額の4分の3を受給できます。

 故人が会社を退職し、老齢厚生年金の受給資格を満たしていた場合にも、遺族は受給する権利があります。

 年金を受け取ることができる人は、故人によって生計を維持されていた家族であるという点は、遺族基礎年金と同様ですが、範囲は少し広がります。妻や子どもはもちろん、場合によっては55歳以上の夫や父母・祖父母・孫なども可能です。

(3)遺族補償年金

 仕事中の事故で亡くなったら「遺族補償年金」。こまかい要件を確認しましょう。

 故人が、仕事中の事故で亡くなった場合は、会社で加入している労災保険から、遺族に対して「遺族補償年金」が支給されます。

 対象になるのは、故人の収入で生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟。

 通常は会社側が手続きをしますが、万が一会社が何もしないようなら、会社の管轄地にある労働基準監督署に問い合わせたほうが良いでしょう。

(4)年金併給の条件

 原則的に、遺族年金は1つしか受け取れません。ただし例外があります。

 ただし、例外的に2つの年金を同時に受けられることもあります。遺族が受ける年金については、「遺族厚生年金+老齢基礎年金」、「遺族厚生年金+障害基礎年金」がその代表的な例です。

(5)寡婦年金・死亡一時金

 遺族基礎年金が受けられなくても「寡婦年金」か「死亡一時金」が受けられることもあります。

「寡婦年金」とは、亡くなった夫が、国民年金の保険料を10年以上納めていた場合、60~64歳の妻が受け取れる可能性のある年金です。

 また、「死亡一時金」は、故人が、国民年金の保険料を36カ月以上納めていた場合に、故人と生計を同じくしていた遺族が受け取れる年金です。

(6)寡婦加算

 小さな子供のいない妻は遺族厚生年金に、一定額が加算されます。

 中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金に加算されるものなので、大前提として遺族厚生年金を受け取っていることが必須となります。

(7)児童扶養手当

 ひとり親家庭は児童扶養手当をチェック。遺族年金と両方受けられることも。

・こどもを養育している祖父母等が、定額の老齢年金を受給している

・父子家庭で、子どもが低額の遺族厚生年金のみを受給している

・母子家庭で、離婚後に父が死亡。子どもが低額の遺族厚生年金のみを受給している

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第6章 その他の手続き

1.株式や金融商品

基本的な流れは、銀行の手続きとほぼ同じです。

 銀行と異なるのは、相続人の代表1人が、必ず、その証券会社の口座を新たに開く必要があること。いきなり解約して、現金化することはできません。

2.生命保険

生命保険金の請求は、受取人が1人でできる書類を提出すれば、約1週間程度で保険金がおります。

 銀行や株などと違い、ほかの相続人の戸籍謄本などを集める必要はなく、受取人が1人で手続きを進めることができます。

3.団信

故人が住宅ローンを支払っている最中に亡くなった場合は、すみやかにローンを支払っている金融機関に連絡しましょう。故人が「団体信用生命保険(団信)」に加入していれば、ローンの支払は免除になります。

 最近は、ほとんどのケースで団信に入っていますが、万が一入っていなければ免除にならないので、念のために確認しておきましょう。

 抵当権を抹消する手続きも忘れずに行います。

4.自動車

故人の名義の自動車やオートバイがあるなら、名義変更をしましょう。

 自動車の場合は、その車のナンバープレートを交付した陸運局で手続きをします。所定の移転登録申請書のほか、戸籍謄本や印鑑証明書、車庫証明書など、さまざまな書類の提出が必要です。遺産分割協議をしているかどうかで、手続きが異なるので、ご注意ください。

 ちなみに、軽自動車の場合は、戸籍謄本や遺産分割協議書などを用意しなくても、新所有者の住民票があれば、名義変更できる場合があります。

5.お墓じまいやお墓の引っ越し(改葬手続き)

改葬 

 埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいいます(墓地、埋葬等に関する法律第2条第3項)。

墓じまいには何か許可がいる?

墓じまいをするには、墓地埋葬法の規定に従い、市区町村への改葬許可申請が必要となります(墓地埋葬法施行規則第2条)。

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引用・参考文献

「Q&Aでマスターする相続法改正と司法書士実務」/日本加除出版株式会社

「相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本」/相続研究会

身内がなくなったあとの『手続き』と『相続』/三笠書房

法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)

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