【目次】
1.相続の放棄を検討されるケース
2.相続放棄検討
(1)相続が開始してからの手続き
(2)3カ月ルールの救済策
3.負債の相続
(1)放棄できなくなる場合に注意
(2)保険金について
4.不動産は資産か
5.相続の放棄をしたものによる管理
相続放棄の件数は、平成元年では約4万件だったものが増え続け、現在では約19万件に達しています。公正証書遺言件数が約11万件ですから、それに比べても圧倒的に多いのです。
ただし、問題は、「相続放棄」ができずに、甚大な負債をそのまま負ってしまう人たちがいるということです。
1.相続の放棄を検討されるケース
・親の資産や負債について把握していない
・実家が持ち家である
・没交渉の親族がいる
・親族に会社を経営している人がいる
もし、たとえ1つでも当てはまるものであれば、あなたは「負債相続予備軍」だと言えます。
中小企業の場合、経営者が法人の連帯保証人として入っているケースがほとんどですので、親族の中に会社の経営者がいる場合は特に注意が必要です。
また、借金の存在は家族のでさえ黙っていることが多いものです。良好な家族関係を保っていた家族の借金でさえ、気づかない方が多いのですから、ましてや音信不通となった家族の借金の存在など知る由もないでしょう。
2.相続放棄手続き
(1)相続が開始してからの手続き
個人の遺した財産を引き継ぐのか放棄するのかの手続きをする期間は自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に限定されています。
(2)3カ月ルールの救済策
プラスの財産もなく、かつ、隠れた借金の存在に気付かなかったことにつき、一定のやむを得ない事情があれば、その負債の事実を知ったときから3カ月以内であれば相続放棄の申立てを認めるというのが最高裁の立場です。
3.負債の相続
(1)放棄できなくなる場合に注意
たとえ、「負債の存在は知る由がなかった」としても、不動産なり、預貯金なり、何かしらを相続する手続きをすでに済ませていた場合には、後から多額の負債の存在が発覚したとしても相続放棄を認めてもらうのは非常に難しくなります。
(2)保険金について
死亡保険金は相続財産ではありません。つまり、相続放棄をしたとしても、保険金は自分のお金として堂々と受け取ることができるのです。
4.不動産は資産か
不動産は資産であるどころか、財産を食いつぶす負動産かもしれません。そして今、資産だと信じて相続した不動産に苦しめられる、「不動産相続難民」が急増しているのです。
5.相続の放棄をした者による管理
すでに相続放棄をしていると主張したものの、「たとえ相続放棄をしても相続人に管理義務は残っている」と通告されます。相続放棄をしたとしても、それによって相続人が不在になってしまった場合、法定相続人にはその不動産の管理義務が残ることが民法で規定されているのです(民法940条)。
6.限定承認を利用するケース
限定承認は故人の債務が正確には分からない場合に、それをプラスの財産の範囲内で相続したいというケースで使われたりします。
なお、限定承認を行うと、故人が相続人に対し、財産を時価で売却したものとみなして「みなし譲渡所得税」が課税されます。このみなし譲渡所得税は、相続人が準確定申告を行い、税金を納付します。
引用・参考文献
身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」がわかる本/ポプラ社