医療過誤による損害賠償の請求は、勝訴率が2割ほどと低く、証拠を集めるのが難しい訴訟類型です。
訴額が高いのが一般で司法書士が扱う頻度は少ないと思われますが、リハビリ施設でのご高齢者の怪我などでは関係してくることもありそうです。
1.言葉の整理
医療事故・・・医療にかかわる場所で医療全般において発生する人身事故一切
医療ミス・・・医療事故が起きてもその被害が発生しなかった場合のこと(狭義)
医療過誤・・・医療事故の中で、事故の発生原因に、医療機関、医師、看護師などの医療従事者に過失がある場合
→医療過誤は民事訴訟で損害賠償、刑事訴訟で業務上過失致死罪などの責任を問われる場合があります。
2.医療事故への対処法
- 医療行為における概要を整理しておくこと
- どこに相談するかを決定すること
- カルテやレセプトの開示と請求、コピー入手をどのようにするか
→レセプトの開示は、公務員は共済組合へ、サラリーマンの場合は健康保険組合へ請求します。
国民健康保険、老人保険の加入者は各市町村の役場に請求します。ただし、医師、医療機関の同意を要します。
一万円未満の場合には、医師、医療機関に通知義務がありません。
2.解決方法
①示談(裁判外での和解)・・・医療過誤事件の当事者が裁判外で話し合いをして解決すること
→約束の履行について強制力はなく、約束を守るという信頼関係を前提とします。
②裁判上の和解・・・確定判決と同じ効力があり、強制執行も可能です。
③民事調停・・・当事者双方と調停委員が話し合い、説得の結果、合意が成立すると裁判官が立ち会って調書の作成がなされます、この調書は確定判決と同じ効力があり、強制執行も可能です。
④即決和解・・・当事者双方が裁判外での和解を裁判上での和解にするために裁判所に申し立てる手続き。
⑤裁判
3.法律構成
①債務不履行責任
帰責事由の立証責任は医師、医療機関側にありますが、債務不履行の事実については患者側が立証しなければなりません。
②不法行為責任
過失の立証を患者側でしなければなりません。また、過失と損害の間の因果関係の立証も必要となります。
4.損害賠償請求
①積極的損害・・・医療行為によって通常生ずべき損害
→治療費、付き添い看護費、入院雑費、通院交通費、器具購入費、葬式費用など
②消極的損害・・・得べかりし利益の喪失
→休業損害、逸失利益
③慰謝料・・・損害を受けたことにより精神的な苦痛を感じたことによる損害
5.医療過誤・医療事故関連の相談窓口
司法書士の扱う医療事故に関係した窓口
司法書士事務所ブライト関連業務
参考文献
「身近に起きる」医療ミス医療事故対処法医療過誤と闘うには/医療過誤事例研究会