【目次】
第1章 相続税の納付
2.相続税とは
3.相続税の計算方法
(1)相続財産の価格
(2)相続税をはじき出す
(4)配偶者や未成年者、小規模宅地など控除項目がないかチェックする
4.配偶者への配慮
(1)配偶者の税額軽減措置
(2)配偶者の短期居住権
(4)婚姻期間が20年以上の夫婦間での住宅の生前贈与は特別受益の対象外
(1)申告書の提出期限
(2)相続税の納付
(3)「延納」「物納」
第2章 不動産を相続や贈与で引き継いだときにかかる税金について
1.贈与税の計算方法

第1章 相続税の納付
相続税の申告・納付が必要なのは、従来は約4%でしたが、平成27年から基礎控除額が4割カットされたため、相続税の申告・納付が必要なケースが増加することになりました。
2018年の国税庁発表では、相続税の支払いが発生した人は、全体の約8.5%にのぼります。
1.相続税の計算から納付までの流れ
相続税が難しいのは、相続人が自分で納税額を計算して申告しなければならないことです。
相続税は、自分たちで税額を計算したうえで、税務署に申告する必要があります。納税額が少ないと追徴課税され、多く支払っても戻ってきません。
- 相続財産の金額を評価し直す
まずは、故人が所有していた財産を把握します。そのうえで、土地や株式などは相続税の評価基準に合わせて、新たに評価し直します。 - 生前贈与された財産を加える
ほかに相続税の対象になる財産が無いか探します。
生前に故人から贈与された「生前贈与財産」はその1つ。死亡保険金や死亡退職金も故人本来の財産ではありませんが、相続税の対象となる財産に含めます。
これらを加えた財産総額から墓などの相続税のかからない財産や債務、葬式費用を除きます。こうして算出した金額を「課税価額の合計額」といいます。 - 基礎控除額と比べる
課税価額の合計額と、基礎控除額を比べます。
もし、課税価額の合計額の方が多ければ申告する必要があります。反対に基礎控除額の方が多ければ、申告は不要。総額から基礎控除額などを引いた額を「課税遺産総額」といいます。 - 相続税を計算する
STEP3で計算した課税遺産総額を、各相続人に法定相続分で分け合ったと仮定。税率表と照らし合わせて、相続人ごとに相続税額を割り出します。
そのうえで、個別に計算した金額を足して、相続税の総額を出します。
この金額を、今度は実際に相続された割合に合わせて割り振ると、各相続人の相続税額が算出できます。 - 控除がないかチェックする
相続税には、配偶者控除をはじめとしたさまざまな控除があるので、それらが適用されるかどうかを確認します。場合によっては相続税がゼロになることもあります。 - 税務署に申告し税金を納付する
複数枚にわたる申告書に記入し、税務署に提出して、税金を納付します。申告と納付までを、相続の開始を知った翌日から10か月以内に行います。
2.相続税とは
相続税とは、相続又は遺言によって財産を取得した人に対し、取得した財産の額に応じて課税される税金です(相続税法第2条第1項)。
相続税の申告・納付は、被相続人の死亡の翌日から10か月以内にしなければならす、これを怠れば、無申告加算税や延滞税を課されるばかりか、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの優遇措置も受かられなくなります。
3.相続税の計算方法
4つのステップで個々の支払い分をはじき出します。
- 課税遺産増額を法定相続分で分ける
遺産を法定相続人全員が法定相続分に従って相続したと仮定した場合の相続税の総額を計算します。遺産相続のときに、この法定相続分を使ったかどうかは関係なく、あくまで計算するための処置として、課税遺産総額を法定相続分で分けます。 - 相続人ごとに相続税を計算する
法定相続分によって分けた金額を元に、相続人ごとの相続税を計算します。
例:課税遺産増額4,000万円を
妻が2,000万円、子2人が各1,000万円ずつを相続すると仮定
・妻 2000万円×15%(税率)-50万円(控除額)=250万円
・子A 1000万円×10%(税率)=100万円
・子B 1000万円×10%(税率)=100万円 - いったん、すべて足す
妻 250万円+子A 100万円+子B 100万円=450万円 - 実際の相続分で分け合う
例:実際には、妻が4/5、子2人が1/10ずつ相続した場合
妻 450万円×4/5=360万円
子 450万円×1/5=45万円
(1)相続財産の金額
①相続財産
相続税を計算するにあたり、最初にすべきことは、相続財産を改めて洗い出したうえで、それらの金額を評価し直すことです。遺産を分け合うときと、相続税を計算する時では、財産の評価基準が異なることがあります。
主な相続財産とその評価方法
土地 (宅地) | 路線価方式か倍率方式 路線価方式は、宅地が面している道路に付けられた「路線価」によって評価する方式。 一方、倍率方式は、固定資産税評価額に、国税庁が定めた評価倍率を掛けて評価額を定める方式。 |
土地 (農地) | 通常は倍率方式で評価する。 ただし、家やお店が多い市街地の農地は、宅地に転用する可能性があるので宅地比準方式で評価する。 具体的には、その農地が宅地だと仮定した場合の評価から、その農地を宅地に転用するときにかかる造成費相当額を控除して評価する。 |
土地 (貸宅地) | 貸宅地とは、他人に貸している宅地のこと。借りている人が借地権をもっているので、貸し手といえども自由にできない。だから、土地の更地の評価額から借地権の価額をマイナスして評価する。 |
土地(駐車場などの雑種地) | 近傍の似た土地の1㎡あたりの価格を基準に計算 |
建物 (自宅) | 固定資産税評価額×1.0 |
建物 (貸家) | 固定資産税評価額×0.7 |
預貯金 | 亡くなった日の残高※ |
上場株式 | 故人が亡くなった日(課税時期)の終値か、その月(または前月、前々月)の終値の平均額で、もっとも低い額 |
非上場株式 | 原則的評価方式か特例的評価方式 原則的評価方式は、株式を発行した会社を、従業員数や総資産価額、売上高によって、会社規模を大・中・小、いずれかに区分する方式。 特例的評価方式とは、直近2年間の配当金額を元に、評価額を算出する方式で、配当還元方式と呼ばれます。 一般に、株式を相続した人が同族株主なら「原則的評価方式」を、少数株主の場合は「特例的評価方式」を用いて、計算します。 |
投資信託 | 新聞等に掲載された基準価額 |
ゴルフ会員権 | 取引価格×0.7(預託金がない場合) |
宝石・貴金属 | 実際の取引価格や鑑定結果 |
自家用車 | 亡くなった日の時価 |
絵画 | 亡くなった日の時価 |
借入金 | 要返済額 |
一般に、固定資産税の課税明細書に記載されている評価額は、地価公示価格の7割程度、相続税の計算をする際の評価額は地価公示価格の8割程度と言われています。
そのため、固定資産税の課税明細書に記載されている評価額を0.7で割り戻し、そこで出た金額に0.8を掛けることでおおよその相続税評価額が計算できます。
- 路線価方式か倍率方式かを見分けるには?
-
どちらを用いるかは、故人の土地に路線価が設定されているかどうかで決まります。
どちらの方式かは、国税庁のホームページで確認できます。
①「一般の土地等用」をクリック
②宅地の欄をチェック
- 路線価方式の土地はどうように評価されるか?
-
路線価に故人の土地の広さを掛けると、評価額が算出できます。おもに市街地などで用いられる方式です。
同じ面積でも、「うなぎの寝床のように、間口が狭くて奥行きがある」といった標準的ではない土地の場合は、奥行価格補正率や間口狭小補正率、奥行き長大補正率などの「補正率」を掛けて、調整します。補正率は国税庁のホームページで調べられます。
路線価×補正率×面積(㎡)=評価額
- 倍率方式の土地はどのように評価されるか?
-
倍率方式の場合の計算方法は、路線価方式よりもシンプルで、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。主に、畑や山林が多い地域で使われる方式です。
固定資産税評価額×倍率=評価額
「一定の倍率」に関しては、国税庁の。ホームページの「評価倍率表」で調べられます。
- 毎年の路線価はいつ発表されますか?
-
路線価はその年の1月1日が基準日となりますが、毎年7月頃発表されるため、仮に3月に被相続人が亡くなっても、その年の路線価の発表まで待たなければ計算できません。
②正味の遺産額(課税価格の合計額)
相続税がかかる財産には、①の財産の他にも次のような財産が含まれます。
これを、正味の遺産額(課税価格の合計額)といいます。
ⓐまず、「みなし相続財産」と呼ばれる生命保険金や死亡退職金も加算されます。
ただし、生命保険金・死亡退職金のいずれも、相続人が受取人の場合には、その額から、「500万円×法定相続人の数」が控除された金額が、正味の遺産額となります。
ⓑ生前贈与財産
被相続人から相続人が受けた贈与で、相続開始前3年以内のものも、正味の遺産額に組み込まれることになっています。
ⓒ相続時精算課税の適用を受ける贈与財産
相続税を計算するときには、これらを財産として加えることが必要です。
正味の遺産額は、相続財産から、被相続人の借金等の債務や葬式費用を差し引いた金額で、被相続人の死亡時の時価で金銭評価されることになります。
(2)相続税をはじき出す
相続税の速算表(上記3のSTEP2で計算する場合に使います)
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
(3)基礎控除額とくらべて相続税がかかるかを判定する
①基礎控除額
基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
全ての相続で対象となる控除です。この基礎控除額より、課税価格の合計額が多いと相続税がかかり、税務署への申告が必要です。
課税価格の合計額から基礎控除額をマイナスした金額は「課税遺産総額」といいます。これが相続税を計算するときの元となる金額です。実際には申告が必要なのに、計算違いをして、申告しないでいると追徴税が発生する場合があるので、慎重に計算しましょう。
法定相続人の数は、実際に財産を相続した人の数ではなく、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
②養子がいる場合
法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数の算定は、次の通り行います(相続税法15条第2項)。
ⓐ被相続人に実子がいる場合は、養子のうち1人までを法定相続人に含めます。
ⓑ被相続人に実子がいない場合は、養子のうち2人までを法定相続人に含めます。
(4)配偶者や未成年者、小規模宅地など控除項目がないかチェックする
相続人の属性による相続税の違い
制度の名称 | 税負担への影響 | 対象者の例示 |
配偶者の税額の控除 | 財産額1億6,000万円か、配偶者の法定相続分相当額、まで配偶者が無税で相続できる | 被相続人の配偶者 |
未成年者の税額控除※1 | 20歳になるまでの年数×10万円を、本来支払う相続税から控除する ※令和4年4月1日以降は18歳 | 相続人が未成年者かつ、法定相続人などの要件を満たすとき |
障害者の税額控除※1 | 85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者の場合は20万円)を、本来支払うべき相続税から控除する。 | 相続人が85歳未満の障害者かつ、法定相続人などの要件を満たすとき |
小規模宅地等の特例 | 故人が自宅や事業などに使っていた土地は、一定の面積まで、土地の評価額が5割か8割、減額される。 | |
贈与税額の控除 | 故人から相続開始前3年以内に贈与された財産は相続税の対象となるが、贈与されたときに納めた贈与税は相続税から差し引くことができる | |
相次相続控除 | 10年以内に2回以上の相続があったら、1回目に払った相続税の一部分を2回目の相続税からマイナスできる。 | |
相続税の二割加算 | 相続税の負担が2割増える | 被相続人の兄弟姉妹や、甥・姪など |
- 未成年者控除、障害者控除、相次相続控除は、基礎控除と何が違うのですか?
-
基礎控除が遺産の総額から引かれるのに対し、これらの控除は個々の相続税額から差し引かれるので、控除の影響が大きいです。
- 相次控除は、高齢の父が亡くなって、すぐに母が亡くなったなどのケースが想定されているのですか?
-
実はそのケースでは使えないことが多いです。一次相続では配偶者の税額軽減が適用されて相続税を納めていないケースでは、控除されません。
①小規模宅地の特例
相続税を大きく下げる方法の一つに小規模宅地等の特例があります。
個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人、または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分には、相続税の課税価額に算入すべき価額の計算上、50%や20%で評価する。
小規模宅地等の特例が適用される土地
宅地の種類 | 自宅としてすんでいた (特定居住用宅地等) ※1 | 店舗や事業を営んでいた (特定事業用宅地等) ※2 | 人に貸していた (貸付事業用地等) |
相続する人 | 配偶者、同居していた親族(両方ともいなければ、故人と別居していた親族) | 親族 | 親族 |
減額される割合 | 8割 | 8割 | 5割 |
減額対象となる土地の面積 | 330㎡ | 400㎡ | 200㎡ |
備考 | 同居親族なら、相続税申告期限まで引き続き住み続けること、居親族は相続税申告期限まで宅地等を保有していることが必要 | 相続税申告期限まで宅地等を保有し、事業を続けていることが必要 | 相続税申告期限まで宅地等を保有し、事業を続けることが必要 |
なお、特定事業用宅地等と特定居住用宅地等のみを特例の対象として選択する場合については限度面積の調整が無く、特定事業用宅地等の400㎡までと、特定居住用宅地等の330㎡までの合計730㎡まで適用することができます。
ⓐ小規模宅地等の特例の要件
・利用区分の要件
亡くなった方、もしくは亡くなった方と生計を一にしていた方が事業用・居住用・賃貸用として利用していた土地であること
・継続要件
相続又は遺贈によって土地を引き継いだ相続人が、その土地を引き継ぎ、被相続人の生前と同じ用途で使用していること
ⓑ小規模宅地等の特例の注意点
・贈与の場合は適用を受けることができない
・原則として、相続開始後10か月以内に遺産分割協議が整っている必要がある
・たった一つの条件を満たさなかったばかりに、適用されないケースがあるので、ご注意ください。
たとえば、故人と別居していた親族が、自分で買った家に住んでいる場合、故人が住んでいた土地を相続しても、特例を受けることができません。
また、条件を満たしていても、申告しなければ適用されません。
4.配偶者への配慮
配偶者への配慮 |
(1)配偶者の税額軽減措置 (2)配偶者居住権の創設 (3)20年以上夫婦であった場合、住宅の生前贈与は2,000万円まで贈与税がかからない (4)婚姻期間が20年以上の夫婦間での住宅の生前贈与は特別受益の対象外 |
(1)配偶者の税額軽減措置
相続税法では配偶者の税額軽減措置の適用を受ければ、配偶者の法定相続分もしくは1億6000万円のいずれか多い金額まで相続税はかかりません。
「故人の配偶者には相続税がかからない」と言われるのは、配偶者が取得する相続財産の額が、この配偶者の税額軽減措置の範囲に収まることが多いからです。
- では、遺産が1億6000万円以下だったら、配偶者に全部相続させれば、相続税はかからなないのですね?
-
その通りです。
ただ、この規定には落とし穴があるので要注意です。
今回の相続(一次相続)では相続税がかかりません。しかし、数年後に配偶者が亡くなって子供が相続したとき(二次相続)には、配偶者の基礎控除はないですし、相続人が一人減っているので基礎控除額も下がってます。そこに多額の財産を相続するとなると、お子様にかかる相続税の額が大きくなってしまいます。
ですので、二次相続まで配慮して配偶者の税額軽減の特例を使うか決めることをお勧めします。
(2)配偶者の短期居住権
相続が開始してから最低6ヶ月間は、故人と一緒に住んでいた家に引き続き無償で住み続けることが可能になりました。
(3)長年連れ添った夫婦間の贈与の特例も
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合は、贈与税について、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除(配偶者控除)ができるという特例です。
- 贈与した年に贈与した人が亡くなった場合に、この配偶者控除の適用はどうなりますか?
-
まず、相続開始の年に故人から財産の贈与を受けていた場合には、相続財産となるため贈与税はかかりません。そのとき、相続開始の年に婚姻期間が20年以上である故人から配偶者が居住用不動産の贈与を受けていた場合には、贈与税の配偶者控除があるものとして、控除される部分については相続財産として加算されず、相続税の対象とはなりません。
(4)婚姻期間が20年以上の夫婦間での住宅の生前贈与は特別受益の対象外
5.特別寄与者への相続税課税
被相続人の療養看護等を行った相続人以外の被相続人の親族が、相続人に対して特別寄与料の支払い請求をした場合において支払いを受けるべき特別寄与料の額が確定した場合には、その請求をした者(特別寄与者)が、特別寄与料の額に相当する金額を、特別の寄与を受けた被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課税されます。
6.相続税申告のスケジュール
- 相続税の申告書を提出するまでの流れは?
-
相続税の申告書を作成し、提出するためには、次の対応を行うことが求められます。
①いくら財産や債務があるかを把握する
②遺言書の確認もしくは遺産分割協議書の作成を行う
③相続税の申告書を作成し、相続税を支払う
(1)申告書の提出期限
申告義務は、誰か一人にではなく、相続人全員にあります。申告書を共通で1通作成したうえで第1表に相続人全員が連署押印し、故人の住所地を管轄する税務署に提出します。
相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内に、税務署に相続税の申告書を提出し、かつ、相続税を支払わなければなりません。
- 10か月以内に遺産分割協議がまとまらない場合は?
-
無申告課税や、延滞税というペナルティを受けることになります。
さらに、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減の適用がなくなります。
- 10か月に間に合わない場合はどうしようもないのですか?
-
遺産分割協議がまとまっていなくても、10か月以内に一旦は法定相続分に従って相続税を申告して納めます。その時点では特例を使い得ないので割高になります。このとき、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、その後3年以内に遺産分割が終われば、2つの特例が適用可能になり、払いすぎた相続税の還付を受けることができます。
- 遺産分割でトラブルになったので、自分一人だけで相続税の申告をすることはできますか?
-
通常は申告書を共同で提出しますが、相続トラブルの場合は、別々に申告書を提出して差し支えありません。この場合、他の相続人は別に相続税の申告をする必要があります。
添付書面
① 次のいずれかの書面
イ 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本
ロ 法定相続情報一覧図の写し
ハ イまたはロの写し
② 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
③ 相続人全員の印鑑証明書
(2)相続税の納付
口座引き落としやコンビニエンスストアでは支払うことができず、故人の住んでいた場所の所轄税務署か金融機関で、現金を納付する必要があります。納付期限を過ぎると、追加で延滞税が発生するので、注意しましょう。
(3)「延納」「物納」
税金を納める現金がなければ「延納」「物納」という方法もあります。
延納とは分割払いのことです。相続財産のうち、不動産の価額が4分の3以上を占める場合は、不動産等価額に対応する税額の部分は最大で20年間、それ以外は最大10年間の延納が認められます。その延納に際しては利息、すなわち利子税がかかります。ちなみに、2018年1月1日以降は年1.6%を基準に、不動産の割合など相続財産の状況に応じて定められています。
一方、物納とは、物で支払うことです。延納でも相続税が支払えない場合に限って認められ、国債や不動産、美術品の一部、それもなければ、株式や社債で支払うことが可能です。
第2章 不動産を相続や贈与で引き継いだときにかかる税金について
税の種類と課税のタイミング
税金の種類 | どういうときに課税されるか | 備考 |
相続税 | 相続によって財産を引き継いだとき | 小規模宅地等の特例などが適用できるかどうかで相続税額が大きく変わる |
贈与税 | 贈与によって財産を引き継いだとき | - |
所得税 | 不動産(貸しアパート等)から賃貸収入があるとき、不動産を売却したときなど | 被相続人が青色申告等を行っていたときは、被相続人が青色申告書の承認申請書を新たに提出する必要あり。また、被相続人の所得税の準確定申告が必要なケースもある。 |
固定資産税・都市計画税 | 毎年1月1日に、土地や建物といった不動産を持っているときなど | - |
不動産取得税 | 不動産を購入したとき、不動産の贈与を受けたときなど | 相続によって不動産を取得したときは課税されない。ただし、相続人以外の者が特定遺贈によって不動産を取得したときは課税される。 |
登録免許税 | 不動産の購入や、相続・贈与により不動産等を取得し、変更登記を行ったとき | 相続・贈与、どちらで不動産を引き継いだ場合も課される |
1.贈与税の計算方法
1.暦年課税(原則)
2.相続時精算課税(特例)
相続時精算課税とは、贈与税の支払いを抑えた贈与を行うことができる贈与税の特例制度です。すなわち、相続税と贈与税を一体化させて清算してしまう制度です。
相続時精算課税のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・贈与税の非課税枠が年間110万円⇒総額2,500万円に ・非課税枠2,500万円を超えても税率は一律20% ・贈与税の価額で足し戻せるため、価額上昇が見込まれる財産を贈与すると節税効果を得られる | ・贈与税110万円の非課税枠が無くなる ・贈与税の計算上、相続開始前3年を超える贈与も相続財産に足し戻される ・現金贈与による節税効果なし |
相続時精算課税を活用した場合、総額2,500万円までは贈与税がかからなくなります。ただし、2,500万円の枠を使い切ったあとは一切非課税枠が無くなってしまいます。
以上のような相続時精算課税制度のメリットは、贈与対象物である財産の評価が贈与時点で行われることから、後の相続発生時に値上がりの予想される財産があるときは利用価値がありますし、他人に賃貸中の不動産を贈与すると、その時点でオーナーチェンジが行われることから、贈与時以後に入ってくる賃料収入が遺産とはならない点等にあります。
相続時精算課税の注意点
①期限内申告が要件
②一度適用すると戻れない
相続時精算課税を適用するための要件
要件 | 贈与者 | 受贈者 |
年齢 | 60歳以上 | 20歳以上 ※令和4年4月1日以降は18歳以上 |
受贈者の要件 | - | 贈与をした人の推定相続人および孫 |
届出書 | - | 贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署に相続時精算課税選択届出書を提出必要あり |
- 相続税対策はいつから始めるべきか?
-
生前に、かつ、認知症になる前に行わなければなりません。
認知症になってしまいますと、生前贈与をできず、遺言書を書くことも、不動産の売買契約を結ぶこともできません。
関連リンク等
引用・参考文献
「遺言書作成マニュアル」/日本法令
「相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本」/相続研究会著
「相続と遺言と相続税の法律案内」/幻冬舎
「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・残し方/日本実業出版社
「身内が亡くなったあとの『手続』と『相続』」/三笠書房
「ゼロからわかる相続と税金対策入門」/あさ出版
「相続について教えてください」/総合法令出版株式会社