
遺贈義務者の引き渡し義務等
意義
遺贈の目的となる物又は権利が相続財産に属するものであった場合には、遺贈義務者は、原則として、その物又は権利を相続が開始したときの状態で引き渡し、又は移転する義務を負うこことするものである。
- 旧法との違いは?
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旧法が不特定物の遺贈義務者の担保責任を定めていたのに対して、現998条は遺贈の目的である物又は権利全般について遺贈義務者の引渡し・移転義務を定めています。
遺言執行者の権限の明確化
1.遺言執行者の通知義務
遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない(1007条2項)。
相続人保護の観点から設けられた規定。
なお、包括受遺者にも通知すべき義務がある(第1007条第2項、第990条)。
2.遺贈の履行に関する遺言執行者の権限
遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる(1012条第2項)。
受遺者による遺贈の履行請求の相手方を明確にすることが趣旨。
受遺者は遺言執行者がある場合には遺言執行者を相手方とし、遺言執行者がない場合には相続人を相手方として、遺贈の履行請求をすべきことが明らかとなった。
3.特定財産承継遺言
(1)対抗要件具備行為
対抗要件具備行為が遺言執行者の権限であることがはっきりした(第1014条第2項)
(2)預貯金債権
預貯金債権については、対抗要件具備行為のほかに払い戻し請求や解約申し入れの権限を遺言執行者に付与した(1014条第3項)。
4.遺言執行者の復任権
- 遺言執行者に広範な復任権を付与した(1016条)のはなぜか?
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遺言執行者の職務が広範に及ぶ場合や難しい法律問題を含むような場合に、適切に遺言の執行ができるようにするためです。
5.復任権拡大に伴う責任
原則として、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う(1016条第2項)。
関連リンク
引用・参考文献
「Q&Aでマスターする相続法改正と司法書士実務」(日本加除出版株式会社)
「相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本」(相続研究会)
遺言書作成(司法書士事務所ブライト)