
1.法改正の概要
(1)民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の概要
ア 配偶者の居住権を保護するための制度の新設
イ 遺産分割等に関する見直し
ウ 遺言制度に関する見直し
エ 遺留分制度に関する見直し
オ 相続の効力等に関する見直し
カ 相続人以外の者の貢献を考慮するための制度の新設
(2)遺言書保管法の概要
(1)民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の概要見出し
ア 配偶者の居住権を保護するための制度の新設
配偶者の居住建物を対象として一定期間、無償にて、配偶者にその利用を求めるもの。
イ 遺産分割等に関する見直し見出し
①配偶者のための方策(持戻し免除の意思表示推定規定)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈または贈与がなされたときは、被相続人による持戻しの免除の意思表示があったものと推定されることになりました(第903条第4項)。
②仮払い制度の創設等
相続財産のうち、預貯金債権を対象として生活費や葬儀費の支払い、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払い戻しが受けられる制度です(第909条の2)。
家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い戻しができる反面、仮払いできる範囲には制限があります。
③一部分割
従来から実務では認められていた遺産の一部のみを分割することができることが明文化されました。
④遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
ウ 遺言制度に関する見直し
①自筆証書遺言の方式緩和
財産目録については自筆でなくてもよくなりました(968条第2項)。
②遺贈の担保責任等(第998条)
③遺言執行者の権限の明確化(第1012条第1項、第1015条)
エ 遺留分制度に関する見直し
遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるのではなく、遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じるようになりました(第1046条)。
オ 相続の効力等に関する見直し
①相続による権利の承継に関する規律
相続させる旨の遺言等により承継された財産についても、法定相続分を超える権利については、登記などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができなくなりました。
②義務の承継に関する規律(第902条の2)
③遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果等(第1013条第2項)
カ 相続人以外の者の貢献を考慮するための制度の新設
相続人以外の被相続人の親族が、無償で相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件の下で、相続人に対して特別寄与の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができるようになりました(第1050条)。
(2)遺言書保管法の概要
遺言保管所に保管されている遺言については、遺言書の検認が不要になるというメリットがある(遺言書保管法第11条)
- 相続関係を除いて、近時成立した民法の改正には何があるのか?
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⑴債権法(民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号))
・保証人となろうとする者は、公正証書の作成を嘱託することができる
⑵成年年齢関係(民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号))
・成年年齢を20歳から18歳に引き下げる(第4条)
・女性の婚姻適齢を16歳から18歳に引き上げ、男女差を解消する(第731条)
関連リンク
司法書士事務所ブライト関連業務
法務省
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
引用・参考文献
「Q&Aでマスターする相続法改正と司法書士実務」日本加除出版株式会社